研究概要 |
整数スピンを持つ一次元Heisenberg反強磁性体は、次の理論的予測をしたHaldaneの名にちなんでハルデン物質と俗称される。この系では、「励起スペクトルが基底状態と励起状態との間にギャップを持つ」との予想がなされて以来、理論・実験両面からの検証が進み、現在ではほぼ実証されて来ている。実験面からは、特に、スピンS=1を持つNi^<2+>化合物が検証物質として最適であることが分かり、様々な試料の作成がされ、ハルデンギャップの大きさΔとNi^<2+>イオン間の磁気的交換相互作用Jには、比例関係が成り立つことが示された。 本研究では、さらに進んで、ギャップの大きさΔに与えるNi^<2+>イオンの結晶場による異方性定数(特定には一軸性異方定数D)の評価を実験的に行った。具体的には、これまでに知られている検証物質について、counter anionや、bridging anion、キレート分子を、化学的に置き換えることにより、JやDの大きさがいろいろと異なった試料を作成することができ、このうちいくつかの化合物で大きな単結晶が作成できたものについて、磁気的な測定を行うことができた。 このうち、μ-N_3[Ni(323-ten)](ClO_4),(323-tet=tetraamine N,N'-bis(2-aminoethyl)-1,3-propanediamine)では、これまでに報告された物質では最大の一軸性異方定数Dを持つことが確かめられ、D/Jの大きさも0.32と非常に大きいことがわかった。この値を使うことで、これまでに提案されたΔ/Jの評価式が有用であるを示すことができた。この結果は磁気国際会議で報告された。また、μ-N_3[Ni(dmpn)_2](ClO_4),(dmpn=2,2-dimethyl-1,3-propanediamine)などの各種試料の測定結果を論文、会議概要などで報告した。成果については現在印刷中のものが多い。
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