研究概要 |
本課題の目標は、分数量子ホール系という強相関系においては内部自由度(スピンあるいは、二層系では層)が多彩な相の研究である。本年度は特に二層系での複合フェルミオン描像を調べた。二層系では層間トンネリングの強さという新たなエネルギー・スケールが生じるのが興味の焦点である。これに対し、以下を明らかにした。 (i)二層系でも複合フェルミオン描像が励起状態(擬スピン波)に対して良く成り立つ。 (ii)二層量子ホール系では、層間トンネリングの強さと層間隔(層内/層間相互作用の差を制御)という二つのパラメータ空間のどこで二層量子ホール効果が起きるか、という相図を描くことが課題となる。これは励起エネルギーのギャップの有無により判定されるが、これは擬スピン波にギャップが開くか否かに他ならず、複合フェルミオン描像により、二層分数量子ホール効果の相図を初めて与えることができた。二層のランダウ準位占有率が1/3,1/5,……と減少するに従い、量子ホール状態の領域は劇的に増えるが、これは複合フェルミオン描像では、磁束付着変換が電子間相互作用を減らすのに対し、層間トンネリングは減らさないという直観像で説明される。 (iii)二層系に量子ドットを作ると、垂直に結合した分数量子ホール二重ドットになる。この系を提案し、全角運動量が二重ドットに特有な魔法数で安定化し、さらに単独ドットと異なり魔法数が光学吸収で観測可能であることを示した。
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