研究概要 |
不均質媒質中の波動伝搬が示す幾何学的振舞いに関して理論的な研究を行なった.その結果、Helmholtz方程式で記述される単純な1次元伝搬においても、以下に示すような多彩な幾何学的要素が含まれていることが明らかになった。これは,解の空間発展が(2+1)-次元ローレンツ群[SO(2,1)あるいはSL(2,R)]による運動に帰着されることによる. 1)波動の振幅が示すスピノル性(2価性) 2)空間のスケール変換に伴う振幅のゲージ変換 3)空間発展を記述するLorentz-Bloch方程式 4)Berry位相 このような幾何学的考えは波動の性質の直観的理解に大変役立つ。しかし一方、直観的には捉えにくい微妙な現象が含まれていることも明らかになった。例えば、波動の振幅が示す2価性はスピン-1/2を表す波動関数のスピノル性とよい対応を示しているが、これは従来見落とされてきたものである。量子力学に固有のものだと考えられている2価性が古典力学の世界に(近似的にではるが)存在することは,大変興味深いことである.以上のような幾何学的現象を観測するための,光学実験についての具体的提案も行なった.
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