研究概要 |
本研究計画の目的は,デジタル地震波形記録の解析から高精度かつ高解像度の地球内部3次元構造を推定することである.我々はこれまでに,効率的に理論波形及びその偏微分係数を計算する計算手法(Direct Solution Method)及び効率的な波形インバージョンのアルゴリズムを開発した.本計画では,これらの研究成果をふまえて広帯域地震波形記録を用いて波形インバージョンを行う予定であった.しかし,高精度の内部構造推定を行うため,より高精度かつ効率的な計算手法及びソフトウェアの開発を行った.本研究計画の研究により,理論波形計算の精度及び効率が大幅に改善され,高精度の内部構造推定が可能になった. 本研究計画の主な成果を以下にあげる. 1.DSM法を用いて,球対称地球モデルに対する\4\-\5000\sの理論波形を計算した.DSM法を用いれば,高精度に計算できることを示した. 2.数値分散を抑制する行列演算子(新演算子,modified operator)が満たすべき一般的な条件を導出し,帯幅を増やさずにこの条件を満たす任意不均質媒質に対するDSM法の新演算子を導出した.新演算子を用いることにより計算時間を増やさずに約30倍精度が改善された. 3.実際の内部構造推定に用いる,球座標系の問題に対する新演算子を導出し,これを用いた球対称地球モデル及び3次元不均質モデルに対するソフトウェアを開発した.これにより周期20-5000sの高精度なP-SVの理論波形10分(SPARC-20)で計算可能になった。3次元不均質モデルに対しても高精度に計算できることがわかった. 4.変位場の展開に用いる試験関数として解析解を用いるDSM法の定式化及びソフトウェアの開発を行った.
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