研究概要 |
南海道地域は百数十年を周期とする地震サイクルが非常に明瞭で,地震と地震の間も急激なひずみ蓄積が予想される.GPS観測によりひずみ集積過程が時間的にも空間的にも詳細に追跡できれば地殻変動の直接観測を通してプレート境界におけるプレート間相互作用の強弱,定常性とゆらぎ,境界域の変形力学等を議論することが可能となる.本研究は,3年間の研究期間内で,台数に限りあるGPS受信機を観測点間に一定期間ごとに効率よく展開・観測し,約1ケ月を単位とする時間尺度で上記の課題に対する解答を得ようとするものである. 観測の結果,四国地方の各観測点は西北西〜北西の方向へ変位していること,変位速度は最南部で最大で内陸へ向かって急激に減少すること,変位速度は大きいものの,この地域に発生するプレート間巨大地震に伴う地殻変動と再来周期から判断して定常的な変動と見なされること,等が明らかとなった.これらは,ユーラシア,フィリピン海両プレートの現在の相互作用が極めて強く,プレート間相対運動の大部分が境界域の変形に費やされていることを意味している.GPS観測値から逆解析により強いプレート間相互作用を定量的に推定し,プレート間結合が弱くプレート間相対運動のかなりの部分が非地震性滑りによって解消されている東北日本の結果と非常に対照的であることを示した.さらに,建設省国土地理院によるGPS全国観測網の成果を合わせて検討した.中国地方の東進を根拠に,アムールプレートに属する西南日本の東進運動が北米プレートとの衝突やフィリピン海プレートとの相互作用により減速され大きなシア-ゾーンが形成されている,との解釈を提出した. 本研究期間内に,兵庫県南部地震の発生,GPS全国観測網の急速な整備等,当初予想しなかった事態が発生したが,本研究の本来の目的は達成されたと考える.
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