研究概要 |
沖縄-台湾間の定期フェリーを利用した研究海域における海面水温・海上気象要素の観測(1990年10月より開始)を継続・維持した.計測システムの維持改善のため,(1)風速計センサの補修を行った.(2)船位の正確な把握のため,新たなGPS計測・記録装置を設置した.利用のフェリーは96年3月末をもて代船となった.96年3月はじめにフェリー搭載の自動気象計の取り外し工事を行った.これによって観測はひとまず終了した.通算約5年分の沖縄-台湾間の黒潮を横断する定期フェリー航路に沿った海面水温,海上気象の観測資料が得られたことになる. 研究海域の大気・海洋相互作用の基本条件となる海況変動について,我々のフェリー観測資料及び利用可能な現場観測資料,衛星資料と組み合わせ検討した.台湾-石垣島間の黒潮が東シナ海に流入するところでは,黒潮流入水と台湾北東の沿岸冷水との相互貫入過程について新たな知見が得られた.また,これまで調査がほとんどなされていない沖縄本島東方の黒潮反流域の海況についても,中規模暖水渦の存在とその変動過程を明らかにした. 海面熱フラックスについて,大気海洋相互作用が活発な冬期について解析を進めた.フェリー観測の海面水温・海上気象要素をもとに,黒潮を横断するフェリー航路に沿った詳細な潜熱・顕熱フラックス分布を求めることができた.暖水域ないし黒潮上では潜熱・顕熱フラックスは,それぞれ210W/m^2,52W/m^2となる.これは,冷水域の場合に比べ2〜3倍大きい.黒潮を横断するフェリー航路に沿った詳細な潜熱・顕熱フラックス分布,フェリー資料とGMS人工衛星資料との組み合わせによる広域雲分布,海上日射分布等を季節別に求めた.その結果,特に冬期において,黒潮暖水域での大気への熱供給と気団変質(雲の生成など)が顕著であった.
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