研究概要 |
過去の付加体においてメランジュのファブリックが空間的時間的にどのように変化するのかを明瞭にすることによって、プレート相対運動の時間的変化の直接的情報を得ることを目的として本研究を行なった。本研究では西日本外帯の四万十帯を対象としてその有効性を検証した。四万十帯を選定する理由は 1)この付加帯はデコルマの運動を反映した初生的構造がその後の衝突などによって破壊されることなく残っていること、 2)白亜紀以降は演繹的相対運動の精度もよいことである 四国における調査研究の結果、四万十帯北帯と南帯付近において、メランジュのファブリックが左横ずれ成分を持つ南への衝上運動から,右横ずれ成分を持つ衝上運動へと急激に変化することが明らかとなった.この結果と演繹されているプレート相対運動を比較したところプレートの相対運動の変化に応じて、ファブリックが急激に変化していることが明瞭となった. また紀伊半島における四万十帯においてもファブリックが系統的に変化することが確認された.この地域においてはメランジュのファブリックに加えて,地図オーダーでのデュープレックス構造が確認され,付加体が底づけ作用によって形成される時の状態も良く,保存されていることが明らかとなった. 更に顕微鏡下において、これらの変形に関与した変形機構の検討の結果、これらの変形は初生的なものであり、デコルマに沿うプレート相対運動そのものであることが強く支持されことが分かった.今後、四万十帯の続成、変成作用を共に検討することにより、より表層での構造運動と対応させ、相対運動の変化を明らかにすることが重要である。
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