研究概要 |
Fortipecten takahashiiの化石産状調査を北海道の幌加尾白利加層において集中的に行った.行った調査は,1)幌新太刀別川に沿ったルートの柱状図の作成,2)地層中の化石の産出状況の全般的記載,3)化石と含泥率測定用試料の採取,4)幾つかの化石産地における貝殻の方位の測定と産状の記録,5)主要な化石産地5カ所における一片約40cmの方形ブロックの定方位採取,6)生痕化石の予察的観察,である. 調査の成果は次の2点に要約できる. (1)F.takahashiiは幌加尾白利加層全体にくまなく分布し,その多くが他性的な産状を示す一方,共産化石は著しく変化することが明らかとなった.また,従来,物理的堆積構造と考えられて来た,いわゆる「ほうき砂」がF.takahashiiが関与して作られた生痕化石である可能性を示唆する産状を見い出した. (2)他の貝化石の産状を深潜没性種,浅潜没性種,および表在種に分けて検討した結果,各化石産地を物理的リワークの被り方によって3つの産状タイプに区別することができた.これら3つの産状タイプは,外側陸棚の浅い部分から深い部分の波浪のエネルギーレベルに対応させることができた.さらに含泥率のデータは深い深度で形成されたと推定した化石産地で高く,浅い場所で形成されたと推定した化石産地で低いことが分った.これらの結果から,幌加尾白利加層中部に少なくとも6つの明瞭な堆積深度の変化に対応した堆積サイクルがあることが明らかとなった.
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