研究概要 |
この研究総括の最大目的のひとつは、古生代〜中生代初期の小型有孔虫類のもつ生層位学的および古生物地理学的解析上の研究価値の重要性について、わが国の研究レベルをアメリカやロシアのそれに少しでも近づけることにあった。少なくとも研究代表者が30年にわたってこれまで収集・収録してきた資・試料の散逸を避けるため、これからの研究の基礎となるデータベースをつくる第一段階としての総括を試みたものである。 研究過程と研究結果の要点は次のようにまとめることができる。1)わが国における、古生代〜中生代初期の小型有孔虫類を扱っている論文のすべてについて、その年代、地域、記載種か未記載か、顕微鏡写真が付されているかを整理したbibliogaraphの完成;2)報告されている属・種のすべてについて、可能な限り原記載標本あるいは模式地標本によって鑑定に問題がないことを確認(その所属を訂正すべき種を指示)し、古生代と三畳紀にわけてアルファベット順および分類単位別に整理、3)2)をさらに産出の年代および記載されている論文および頁を付してリストを完成;4)その結果、わが国からは古生代で59属・222種、三畳紀からは25属・37種というかなり多くの種が報告されていることが明らかになった;5)さらに産出年代について細分してみると、シルル紀に1種・石炭紀前期に98種・石炭紀中〜後期に46種・ペルム紀前期に33種・ペルム紀後期に35種・三畳紀中期に7属10種および三畳紀後期に22属30種の報告がなされ;6)テチス海要素種を含む群集とゴンドワナ要素種を含む群集とが区別され、とくにペルム紀にその対立が明確であることが明らかになった;7)この他、Endothyroids,Archaediscids,Bradyinids,Tetrataxids,Palaeotextulariids,Colaniellidsなどの指準種を特定することで、小型有孔虫類に関する年代決定および古生物地理学に関するのデータベースが近い将来完成する可能性が指摘できよう。
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