研究概要 |
1.雌阿寒および大雪火山の地質調査を行った.雌阿寒火山については,中マチネシリ火砕噴火期の層序の確立とともに,過去1万年間の火山発達史が明らかになった.大雪火山の調査では,溶岩ドーム群の溶岩および多量にみられる苦鉄質包有物を採取した. 2.雌阿寒火山および大雪火山の岩石の化学組成分析を北海道大学理学部の蛍光X線装置により行った.斑晶および石基鉱物のコアの化学組成および斑晶の累帯構造を本学のEPMAにより詳細に分析した.その結果,混合のマクロ的な変化および端成分マグマの組成が明らかになり,安山岩やデイサイトマグマが,マグマ溜まりと火道での多段階のマグマ混合過程を経て噴出していることがわかった.また混合の時間的な変化もリム近傍での微細な累帯構造のプロファイルから考察し,噴火時において連続的なマグマ混合が重要な役割を示すことが定量的に解析された. 3.中マチネシリ火砕噴火期におけるマグマ混合の現象をフラクタルの概念に基づきモデル化した.測定した縞状軽石・スコリアのフラクタル次元は0.9〜1.6まで変化するが,それらは混合の進行過程を反映したものであることが明らかになった.火砕噴火の時はマグマの上昇速度が大きいため,混合マグマは乱流状態になりやすく,その場合フラクタル次元は最も高いが,混合が進むにつれフラクタル次元は減少し,完全に均質化すればフラクタルではなくなることが見いだされた. 4.大雪火山の苦鉄質包有物の生成条件を検討した結果,珪長質マグマ溜まりから2層のマグマ溜まりへの成長過程,火道での多段階マグマ混合過程のモデルが提示された.
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