研究概要 |
アルカリ長石は,単斜晶系から三斜晶系へ転移するオーダリング(Yオーダリング)において熱とともに水蒸気を必要とするため,多量に含んだ水蒸気を空中に放出しながら冷却していく火砕流堆積物内部では,Yオーダリングの進行程度が系統的に変化するはずである.この点を濃飛流紋岩を構成する溶結凝灰岩層にあてはめて冷却過程を明らかにし,cooling unit区分の手段として使えるよう検討することが本研究の目的である.得られた成果は次のようである. 1.薄い溶結凝灰岩層(最大層厚約300m)では,主要なflow unitに対応してYオーダリングがその主要部で進行し,下部と上部では進行していないというパターンが認められ,厚い溶結凝灰岩層(最大層厚約800m)では,Yオーダリングが主要部に加えて上部においても進行し,下部だけが進行していないというパターンが認められる. 2.厚い溶結凝灰岩層においては,unit上部へ向かって下方からの熱および水蒸気の供給が多いため,Yオーダリングが上部においても進行すると考えられる. 3.1枚のcooling unitにおいて,Yオーダリングが進行している部分は熱と水蒸気を保持していた部分,進行していない部分は熱と水蒸気の両者かいずれかを欠いた部分をそれぞれ示しており,それぞれのパターンが1 cooling unitを表わすと判断される. 4.1枚のcooling unitの厚さは,薄い溶結凝灰岩層で100-200m,厚い溶結凝灰岩層で250-350mである.
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