研究概要 |
初年度の前半はインド半島及び周辺の東ゴンドワナ陸片各地のグラニュライト、チャルノカイトに関する各方面の文献研究を行った。そして、東ゴンドワナのグラニュライト変動帯に共通して、同超大陸の融合事件に関係する約11億年前の変動と、西ゴンドワナ融合事件として知られるパンアフリカ変動を反映する約5.5億年前の再変動が特徴的に発達することを明らかにした。また、11億年変動は過褶曲、衝上断層とグラニュライト変成作用が特徴的で、収束テクトニクスの性格を示すこと、一方、5.5億年変動は各種の褶曲作用や断層運動、変成作用と多量の花崗岩の活動が特徴的であり、全体としては既成地殻の再変動としての性格が強いことを指摘した。特に、東ゴンドワナの5.5億年前変動に特徴的に伴われるインシピエントチャルノカイトは、変成帯の主方向に直交する最大伸長応力方向を示す共役断裂系に伴われており、Yoshida & Santosh (1994,Precambrian Res.,66, 379-392)の示したテクトニクスモデルが裏付けられた。 初年度後半から次年度は、東ゴンドワナ各地のグラニュライト標本の諸種の分析・解析を実施した。流体包有物中のCO_2やグラファアイトの炭素同位体の研究からは、グラニュライト変成作用におけるCO_2の挙動が示された。また、CO_2流体は東ゴンドワナの約5.5億年変動に特徴的な希元素ペグマタイトと成因的に深い関係があることが指摘された。同位体年代研究では、インド半島南部や南極に発達するグラニュライト変成作用の少なくとも一部は約5.5億年前のパンアフリカ変動に直接関係したものであることが明らかにされた。これらを総合すると、東ゴンドワナの5.5億年グラニュライト変成作用は、約11億年前に形成した既成地殻の再変動事件であること、この変動には、地殻深部からのCO_2の流入によるグラニュライト/チャルノカイトの形成が伴われたこと、これらの一連の事件は伸長テクトニスクを特徴とするリフトテクトニクス的な造構場で行われたことが指摘された。これらの結果はいずれもYoshida & Santosh(1994)モデルに整合的であった。 これらのの研究成果は、平成6〜7年度の国内外の学会/シンポジウムでの28の講演、学術誌等での17編の公表論文(うち1編は印刷中)と4冊の書籍(うち1冊は印刷中)として発表された。
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