研究概要 |
1.関東ロームを試料に用い,これを希硝酸とふり混ぜる方法で溶出実験を行い,主な成分の溶出速度を測定した。反応の進行とともにpHが上昇するので,ふり混ぜ時間の関数として各成分の濃度とpHをプロットした。Al濃度の時間変化を時間の二次式で近似し,任意の時間における溶出速度を求めた。Alの溶出速度は[H^+]^<0.53>に比例した。この結果に基づいて酸性雨による関東ロームからのAlの溶脱を予測した。このとき溶液中にK^+が存在すると,反応の進行とともにK^+濃度が減少し,同時にpH上昇も抑制されることを見いだした。このことは酸で変質を受けた関東ローム中の粘土鉱物のH^+が酸性条件下でもK^+によって置換されることを示唆している。 2.Alの溶出に関係する因子としてpHのほかに酸化還元状態も重要であることを確認した。埼玉県南部荒川流域の地下水,湧水の分析から,浅層の地下水が還元的性格をもち,高濃度のFeとSiO_2を含むことを明らかにした。このことから還元環境におけるケイ酸塩鉱物からのFeの引き抜きがSiO_2の溶出を促進すると考え,同時にAlの溶脱が起こることを予測した。この仮説を実証するために,O_2を除去した水に還元剤としてアスコルビン酸を添加して関東ロームの溶出実験を行った。この条件下ではFeよりも遅れるが,SiO_2,Alの両成分の溶出が起こることを見いだした。このアスコルビン酸溶液のpHは3.0であった。この溶液と同じpHをもつ希塩酸ではAlの溶脱は起こらなかった。
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