研究概要 |
ケイ素と炭素の混合物を焼き固めた試料のレーザー蒸発によって混合クラスターを発生させた。ケイ素原子1個、炭素原子をn個を含むクラスターについて、特定のサイズのイオンをRFトラップ中に閉じこめて酸素と反応させ、親イオンの減衰から反応速度定数を決定した。正イオンの反応に関しては、生成物は親イオンに酸素原子が1つ付加した1酸化物のみであり、炭素、ケイ素原子の引き抜き反応は観測されなかった。これは既に報告したスカンジウム-炭素2成分系の反応(スカンジウム原子の引き抜きが容易に起こる)とは対照的である。一方ケイ素を2個含むクラスターの場合にはクラスターからの原子の引き抜き反応が観測された。異原子を含まない炭素クラスターイオンの酸化反応においても炭素引き抜き反応がおきる事を考えると、ケイ素を一つだけ含むSiCnクラスターにおいては、炭素とケイ素が特に強く結合していることが示唆される。また炭素数が偶数(ケイ素原子まで含めると奇数)個のクラスターイオンは奇数のものより2桁ほど反応性が高いことが明らかになった。反応性の低いn奇数クラスター(全体としては偶数)は環状構造を持つと推測される。またn=2,3については反応性の異なる異性体が存在することが分かった。15EA02:負イオンの反応(n=2-4)ではn=2の場合のみ酸化物イオン(酸素原子付加)が観測された。n=2,3の場合、反応によって電子が脱離することを示唆する結果が得られた。本研究の結果の一部は論文として発表した。
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