研究概要 |
本研究では、分子内のヘテロ原子(N,S,Se,Te,Sn)同士が空間をとうし相互作用できる鎖状および環状化合物を設計、合成し、ヘテロ原子間相互作用により安定化、生成する新規なhypervalent(超原子価)化合物の単離、構造決定を行いその化学的挙動を明確にした。結果について以下に略述する。 一般に4配位ジハロテルランを硫化ナトリウムで処理すると、還元反応が進行し、2価のテルリドを生成する。しかし、隣接位にアミノ基を有するジハロテルランと硫化ナトリウムの反応では、還元体のテルリドは全く生成せず、ハロゲンがイオウに置換した、チオテルロキシドが生成する。また、イオウの代わりにセレンを用いるとセレノテルロキシドが生成し、X線結晶構造解析により、セレン-テルル結合が二重結合性を有していることが判明した。これは、第16族元素におけるカルコゲン-カルコゲン二重結合の最初の例である。更に、これらカルコゲノテルロキシドは新規高配位化合物に変換できる。 8-ジメチルアミノ-1-メチルセレニルナフタレンのセレノキシドは無水酢酸と反応し、転位生成物は全く生成せず、非常に興味あることに脱アルキル化が進行し、セレノペルエステルを与える。このセレノペルエステルは容易に加水分解され、相当するセレネン酸無水物を生成する。通常、セレネン酸無水物は不安定であるが、ペリ位にアミノ基をもつセレネン酸無水物は非常に安定である。
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