研究概要 |
本研究者は1994年に、光学活性シッフ塩基とチタンアルコキシドから調製しキラルなチタン化合物存在下にアルデヒドとジケテンを反応させると光学活性5-ヒドロキシ-3-ケトエステルが高い不斉収率で得られることを見い出した(J. Chem. Soc., Chem. Commun, 1994, 341 ; Tetrahedron, 1994, 50, 4385)。この時点での不斉収率は最高84%eeであった。その後、より高い不斉収率の達成をめざして新たな不斉金属触媒の設計と合成を行った。 具体的にはサリチルアルデヒドのフェノール性水酸基のオルト位にかさ高いtert-ブチル基を導入した3-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンズアルデヒドと(S)-バリノールから合成したシッフ塩基の誘導体と触媒存在下にアルデヒドとジケテンを反応させると5-ヒドロキシ-3-ケトエステルが84%の光学純度で得られたのを、さらに、反応温度などの条件や触媒構造に改良を加えることにより光学純度を92%にまで向上させることに成功した。この5-ヒドロキシ-3-ケトエステルは二段階で容易に光学活性な6置換-4-ヒドロキシラクトンに導くことができるが、このキラルラクトンはコレステロール生合成阻害剤として注目されるコンパクチンやメビノリン類縁体に共通な生理活性発現に必須のキラル部分である。 また触媒の構造に関してはチタンイソプロポキシド-シッフ塩基(モル比1:1)化合物が単量体として存在し触媒前駆体としてはたらいていることを明らかにした。
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