研究概要 |
1.1,2-ビス(2-ヒドロキシベンズアミド)エタンを配位子とするマンガン(III)錯体を用いた2,6-ジ-t-ブチルフェノールの酸素雰囲気下50気圧エタノール中100℃の反応は、特異的に相当する4,4-ジフェノキノンを生成することを見いだした。副生成物として相当する1,4-ベンゾキノンが少量得られた。本反応はマンガンの高酸化状態を安定化するアミド系配位子を持つマンガン(III)錯体を用いたフェノキシラジカルの初めての反応であり、二分子カップリングが優先的に起こることがわかった。 2.1,1-ジアリールアルケン類とトリス(2,4-ペンタンジオナト)マンガン(III)または1,3-ジカルボニル化合物-酢酸マンガン(III)系の酸化的ラジカル反応で得られる5,5-ジアリール-4,5-ジヒドロフラン類のジクロロメタン中での光照射は、定量的に置換ナフタレン類を生成することを見いだした。この光反応の圧力効果は検討する時間がなかった。しかし、1,1-ジアリールアルケン類のアリール基上の置換基の種類および位置を変えることで、色々な置換ナフタレン類を合成することができた。また、同様の光照射をナフチルジヒドロフラン類で行なうと、ビナフタレン類が高収率で生成することもわかった。この反応で得られたビナフタレン類は、立体特異的触媒反応に使うことのできる金属錯体の配位子として今後期待される。 3.酢酸マンガン(III)の熱分解で生成するカルボキシメチルラジカルを使った高圧下での反応は現在進行中であり、今後10気圧から徐々に圧力を上げ、80気圧まで調べる予定である。また、高圧力下での1,3-ジカルボニル化合物-酢酸マンガン(III)系の酸化的ラジカル反応も現在進行中であり、圧力効果がラジカル反応の立体選択性にどのように影響するかをさらに詳しく調べる予定である。
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