研究概要 |
筆者は、π-アリルパラジウム錯体の形成をキ-ステップとする、1,3-ジエンへのスズヒドリドの位置選択的付加によるアリルスズ化合物生成法の開発、およびそのカルボニル-アリル化反応への応用を試み、以下の点を明らかにした。(1)イソプレンとベンズアルデヒドとの反応をモデルとして、パラジウム触媒、配位子、ヒドリド源、溶媒、反応温度など反応条件を種々調べたところ、そのカルボニル-アリル化反応は、Pd(PPh_3)_4またはPd(OAc)_2/PPh_3触媒(1-2 mol%)、H_2O/HOAc溶媒、40℃という反応条件が最も有効であり、ほぼ100%の位置選択性、85%の収率で2,2-ジメチル-1-フェニル-3-ブテン-1-オールを生成した。(2)上記の反応条件をイソプレンと種々のアルデヒドの反応に応用した。電子求引基を持った芳香族アルデヒドでは、高い位置選択性と高い収率を示した。脂肪族アルデヒドと電子供与基を持った芳香族アルデヒドでは、位置選択性は良いが、収率は30%と低かった。そこで、反応条件を再検討したところ、Pd(PPh_3)_4触媒にPPh_3を添加すると、最も収率が低かった脂肪族アルデヒドでも50%以上まで改善することができた。(3)この方法を1,3-ペンタジエンやミルセンを用いる位置選択的カルボニル-アリル化反応に応用した。現在のところ、反応機構を明らかにすることはできていないが、アリルアルコールを用いるカルボニル-アリル化反応の機構から推定して、系内で生成したスズヒドリド化合物がパラジウム(0)へ酸化的付加し、続いてジエンがパラジウム-ヒドリド結合へ位置選択的に挿入したπ-アリルパラジウムスタナ-トを経て進行したと考えている。
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