研究概要 |
〔CO_2(CO)_8〕とB_2H_4・2PMe_3とからホスフィンで安定化されたボリレン錯体〔Co_7(CO)_7(BHPMe_3)〕が合成された.これは初めてのボリレン架橋複核錯体である.これまで,BH_3・PMe_3やB_2H_4・2PMe_3のようなelectron preciseボランの配位はB-HやB-P結合を切らずにそのまま配位していたのに対して,この系ではB-H結合とB-B結合の切断を伴い,新しい反応形態であった.BH_3・PMe_3の存在下,シクロペンタジエニル基で電子豊富になったメチル錯体〔CpWMe(CO)_3〕ならびに〔CpFeMe(CO)_2〕を紫外照射することにより,メタンを発生し,ボリル錯体〔CpW(BH_2PMe_3)(CO)_3〕,〔CpFe(BH_2PMe_3)(CO)_2〕をそれぞれ発生することを見出した.これはBH結合の切断を伴う反応である.また,BH_3・P(CH_3)_2CH_2P(CH_3)_2・BH_3の存在下〔Cr(CO)_6〕の光反応により二つのボラン部位から脱水素が起こり,B-B結合をもつ5員環ジボランが生成し,これはM-H-Bを通して4座配位子として二つのクロム部位に配位した〔{Cr(CO)_4}_2(BH_2BH_2PMe_2CH_2PMe_2)〕錯体を生成することを見出し,結晶解析によりその構造を明らかにした.この錯体はジメタラテトラボラン誘導体として記述できるクラスターである.また〔Cp^*RuCl〕_4とBH_3,PMe_3との反応では強固なB-P結合の解裂を伴って塩素原子の移動が起こり,クロロトリヒドロボラートイオン〔BH_3Cl〕がルテニウムに配位した錯体が生成した.この錯体はB-Cl結合を有するので,複分解反応を利用て新たに金属核を取り込む可能性があり,ボリレンクラスター錯体の出発物質として期待される.
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