研究概要 |
1.光学活性なビオローゲンの合成-1-フェニルエチルアミンと1-(1-ナフチル)エチルアミンを光学活性置換基として持つ対称型および非対称型光学活性ビオローゲンを合成した。ナフチル基を持つビオローゲンでは水溶液中で濃度が大きくなるとビピリジニウム環とナフチル環とのπ-π相互作用に基づく自己会合挙動がみられ,光学異性体により差がみられた。また,一電子還元体であるビオローゲンラジカルカチオンではビピリジニウム環同士の会合がみられ,置換基の違いによる会合挙動の違いを見い出した(日本化学会第68秋季年会発表(1994))。 2.非対称型光学活性ビオローゲンを面上に結合させたN-アルキルポルフィリンおよび金属ポルフィリナト錯体の合成-1-メチルビピリジニウムイオンを垂直に結合させたN-アルキルポルフィリンおよび亜鉛錯体を合成し,その蛍光寿命と電子供与体・受容体の配向との関連を検討した(論文5参照)。また,光学活性ビオローゲンを結合させたN-アルキルポルフィリンおよび金属ポルフィリンの合成を遂行中である。 3.対称型光学活性ビオローゲンを用いた光誘起電子移動反応の立体選択性-光学活性な光増感剤であるΔ型トリス(2,2′-ビピリジン)ルテニウム(II)錯体の励起三重項状態の光学活性ビオローゲンによる消光反応に立体選択性を見い出し,速度論的に検討した(第7回配位化合物の光化学討論会(1994),第44回錯体化学討論会(1994)発表)。ルテニウム(II)錯体のビピリジン環とビオローゲンのナフチル環とのπ-π相互作用に基づくイオン対会合錯体内消光反応を見い出し,会合過程と電子移動過程の両方に立体選択性があることがわかった。 4.光学活性ビオローゲンと亜鉛ミオグロビンとの立体選択的分子間電子移動反応-亜鉛ミオグロビンの励起三重項状態の光学活性ビオローゲンによる電子移動消光反応に立体選択性を見い出した。また,光学活性なポリ-L-グルタミン酸イオンの添加により立体選択性の減少がみられた。これは,光学活性ビオローゲンとポリ-L-グルタミン酸イオンとの立体選択的イオン会合による効果であることがわかった(論文3参照)。また,亜鉛ミオグロビンの励起三重項状態の電子移動消光反応はグロビンのコンフォメーション変化に規制されていることが,一連の消光剤との反応により明らかとなった(論文1,2参照)。 5.以上の測定やデータ解析の一部は今回購入したパーソナルコンピューターを活用した。
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