研究概要 |
白金錯体は、固体状態でしばしば平面四配位型の単位が積層したカラム構造をとり、単量体には見られない特徴的な発色や強い発光、高伝導性等の興味深い性質を発現する。本研究では、ポリピリジン類を配位子とする種々の白金錯体を用いて、結晶中の錯体の配向を積極的に制御することにより、生じる分子間(錯体間)相互作用の効果を、構造化学的、分光学的両面から系統的に調べた。π共役系の広がった配位子、3,3′-ビイソキノリン(i-biq)を含む白金錯体、[Pt(X)_2(i-biq)](X=Cl^-,CN^-),[Pt(i-biq)_2]^<2+>においては、結晶中で金属-金属相互作用を生じ、可視部に特有の電荷移動吸収と発光を示すものや、配位子のππ相互作用により配位子部分でスタッキングするものなど様々な構造をとる金属錯体が得られ、それに伴って生じる発光特性が解明された。この研究成果は、第30回錯体化学国際会議(ICCC)および国際シンポジウム(95SPACC)において発表された。また、[Pt(en)(bpy)]A_2(en=エチレンジアミン;bpy=2,2′ビピリジン;A=ClO_4,PF_6)の結晶は、シャープな振動構造を伴う発光スペクトルを示し、錯体間の相互作用のない系とみなされたので、X線構造解析により結晶構造を明らかにし、発光スペクトルとの関係を上記の相互作用の強い系と比較検討した。その結果、錯体の配向が類似していても電子的な相互作用を起こしうるためには、錯体間の接触距離や配置、電荷分布など微妙な要因が関与してくることが示唆された。これについては、第7回配位化合物の光化学討論会において講演を行なった。さらに、関連する亜鉛錯体やルテニウム錯体についても結晶構造と発光特性を詳細に調べており、この結果は、日本化学会第69春季年会で発表を行なう。また、日本化学会第68秋季年会においては、"若い世代の特別講演会"の演者に選ばれ、本研究成果を含む講演を行なった。一連の論文は現在準備中である。
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