研究概要 |
1.研究計画1〜2については、1994年6月に山形市で開催されたInternational Conference on Bio-radicals Detected by ESR Spectroscopyにおいて、Y.Kotakeらによって類似の系についての詳細な研究発表が成されたので、次のように変更した。 重金属イオンに対して、ジチオカルバメートと同様の配置環境を作ると予想される、チオール基を有するアミノ酸であるシステインの鉄(III)錯体を水溶液中で形成させ、この系中でNOドナーであるS-nitroso-N-acetylpenicillamine(SNAP)からNOを発生させてESRを測定したところ、特定のFe^<3+>vsシステイン比の系で、安定な、超微細分裂を示す信号が得られ、鉄(III)-チオレート錯体によっても、水溶液中でNO捕捉が行われることを確認した[第33回ESR 討論会,1994年 9月,東北大工,にて発表]。従って、ジチオカルバメートに代え、チオール基を有するペプチドは配位子とした系で、研究を続行した。 2.研究計画3に沿って、様々なシークエンスのシステインペプチドを合成し、その鉄(III)錯体によるNO捕捉を試みた。その結果、テトラペプチド〜ノナペプチドのほとんどが、被捕捉NOによるESRスペクトルを与えた。また、これらのスペクトルから、ペプチド鎖長やペプチドシークエンス中のシステイン残基数、あるいは配置に依存して、超微細分裂の様子や超微細結合定数が異なることがわかり、またこれらのESRパラメータは単分子チオール基の鉄(III)錯体の結果とも、まったく異なることが分かった。すなわち、ペプチド鎖の形成がチオール基の鉄(III)イオンとの錯形成およびそれら錯体の電子状態に、さらにはNO捕捉の結果生成する鉄(III)-チオレート-NO錯体の電子状態にも大きな影響を与える事が、明らかになった。[第69回日本化学会春期年会にて発表]。 現在、ペプチド鎖のタイプと鉄(III)錯体の電子状態との関連を系統的に検討中である。
|