研究概要 |
2-ピリジンセレノラト(pySe)を含むコバルト(III)錯体としては、[Co (pySe)(en)_2]^<2+>,[Co (pySe)(bpy)_2]^<2+>,[Co (pySe)_2(bpy)]^+,fac-[[Co (pySe)_3]を新たに合成した。[Co (pySe)(en)_2]^<2+>のX線構造解析により、セレノラトのトランス影響(シス位のCo-Nに比べてトランス位のCo-N結合が0.045†長い)を明らかにするとともに、セレノラトの立体化学的性質(fac-[[Co (pySe)_3]のみが得られる)をチオラトのもの(mer-[Co (2-pyridinethilato)_3]のみが得られる)と比べ、セレノラトの方が、共有結合半径が大きいことと、トランス影響が大きいことによる幾何異性の偏りと考えられるなどの新しい知見を得た。また、これらのセレノラト錯体は、空気中で酸化分解を徐々にし、不安定だった。ロジウム(III)錯体としては、[Rh (pySe)_2(PPh_3)_2」^+,[Rh (pySe)_3]を新たに合成した。[Rh (pySe)_3]錯体は、コバルト錯体と同じく、fac構造のみが得られた。パラジウム(II)錯体としては、[PdCl_2 (pySeBz)_2]を新たに合成し(pySeBzは(2-ピリジル)ベンジルセレニド)、固体状態での熱分解により、[Pd (pySe)_2]が生成することを、熱重量・熱示差測定とNMR,XPSスペクトル,蛍光X線分析を明らかにした。[PdCl_2 (pySeBz)_2](pySBzは(2-ピリジル)ベンジルスルフィド)も合成し、同様に熱分解したところ、類似の反応により熱分解して、[Pd (pyS)_2](pySは2-ピリジンチオラト)が、得られた。[PdCl_2(Me_2S)_2]錯体では、熱分解して、PdSが生成することが知られているが、それらとは異なる熱分解をすることがわかった。S-C結合よりもSe-C結合が切断しやすいこと、切断の機構が、アルキルアリール基の性質によりかなり異なることを明らかにした。ところが、[PdCl_2 (pySeBz)_2]をクロロホルム中で、室温で、再結晶すると[PdCl_2(pySepy-N,N')]に(pySepyは2,2'-ジピリジルセレニド)、錯体を反応場として配位子カップリングをすることを見いだした。[PdCl_2(pySepy-N,N')]については、X線構造解析をして構造を決定した。このような新規で、合成有用な反応を見いだすことができた。
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