研究概要 |
多様な配位構造とスピン状態をとる金属錯体よりなる集合体、配位高分子は、固体物性発現の鍵となる電子相関、電子-格子相互作用が次元性制御により自在に変え得るため、単純な系では実現しえない物性が発現すると考えられる。しかし、どの様な分子間相互作用が格子設計、物性発現に有用であるか明らかではない。本研究では、この様な系における格子設計、物性設計法の確立を目的とし、錯体分子ユニットを、配位結合あるいは水素結合等の分子間力を用いて多次元化した系の構築を目指した。特に、クロラニル酸(H_2CA)が遷移金属と一次元状配位高分子を形成することに注目して、これらをビルディングブロックとした種々の多次元格子:{[M(CA)(H_2O)_2](Guest)}_n (M=Cu^<2+>,Fe^<2+>,Mn^<2+>;Guest=H_2O,phenazine,2,5-dimethylpyrazine)の合成を行った。これらの化合物は金属にCA2分子がキレート配位し、さらに水分子が配位した八面体構造をとり、それぞれが連結した一次元鎖となっている。配位水は近傍の一次元鎖内のCAの酸素と水素結合することにより2次元シートを作っている。その層間には、ゲスト分子が挿入され水素結合ネットワークを形成している。これら配位高分子のシート構造は、ゲスト分子の水素結合様式の違いにより大きく変化している。すなわち、フェナジンおよびジメチルピラジンはプロトンアクセプターとして働き、シート間と一つの水素結合のみを形成することでそのシートはフラットな構造を示すが、水系では、ドナーおよびアクセプター両方として働くことで数種の水素結合を形成し、シート構造を複雑化している。以上のように、[M(CA)(H_2O)_2]_nをユニットとした配位高分子は、二次元シートの層間に種々のゲスト分子の挿入が可能である。また、フェナジン系では、最近接のフェナジン-フェナジン間距離は3.2Åと非常に近いことから、電荷移動型分子等を挿入することにより、伝導性と磁性が絡んだ系の構築をも期待できる系である。
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