研究概要 |
まず,ペプチド複合金属錯体の基礎的な骨格となるアミノ酸金属錯体として銅(II)錯体をとりあげ,主としてDNAファイバーESRにより詳しく検討し,錯体配位平面の立体配向がアミノ酸残基の選択により制御出来ることを明らかにした。次に種々のペプチド銅(II)錯体について同様な解析を行うと共にDNA切断反応の塩基配列特異性をアクリルアミドゲル電気泳動により検討し,ヒスチジンを含むペプチド錯体が他のペプチド錯体と異なったサイトの認識をしていることを明らかにした。また水溶性ポルフイリンやシッフ塩基錯体についてDNAに対する結合構造や結合定数についてのこれまでの研究成果を論文としてまとめて発表した。さらにフェナントロリン-ペプチド複合体の中間体となる種々の2,9,-および5-X-phen (phen=1,10-フェナントロリン,X=CH_3,NO_2,Cl,NH_2,NHCOCH_2NH_2)の銅(II)錯体を合成しDNAファイバーESRによる解析と共に過酸化水素存在下におけるプラスミドDNAの切断反応解析を行った。切断活性は乱雑な配向の成分が多いほど,またNO_2やClなどの電子吸引性の置換を持つ場合に高くなることから,活性種はインターカレートしていない錯体で,第3および4配位座の配位水のpKaが活性に関与していると推定した。またフェナントロリン-ロイシン混合配位子白金(II)錯体と自己相補配列オリゴヌクレオチドとの結合構造を2D-NMRと分子動力学計算によって解析しこの錯体がDNA主溝側からAT塩基対間にインターカレートすることを明らかにした。以上の結果はICBIC-7(1995),環太平洋国際化学会議(1995),第45回錯体化学討論会(1995),および第70春季年会(1996)などにおいて発表した
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