光応答性を有する配位子の合成とそれを含む金属錯体の創製を目的とした研究である。光によるシス-トランス変化を示すスチルベンを骨格に有する新しいタイプの架橋四座配位子を合成した。合成法は、まずパラートルエンカルボン酸の硫黄による酸化カップリングを行いトランス-スチルベン-4、4'-ジカルボン酸を経て、塩化チオニルにより酸クロリドを作り、N、N-ジエチルエチレンジアミンを大過剰加えることによりアミドを形成させ、最終的にLiAlH_4によってアミンに還元した。得られた配位子の構造は次のようになっており、トランス-スチルベンを架橋部位に持つ四座配位子であることがわかった:Et_2NCH_2NHCH_2(C_6H_4)CH=CH(C_6H_4)CH_2NHCH_2CH_2NEt_2=Lと略記。 そこでまず、手始めに塩化銅を用いて錯体を合成したところ、CuCl_2LCuCl_2なる組成を持つ新しい錯体が得られた。この錯体は、水、アルコール類、アセトン等に良く溶け顕著なソルバトクロミズムを示した。これは、塩化物イオンの解離平衡が用いた溶媒のアクセプター性の強さに依存することによるものであることが明らかとなった。現在その定量的な平衡定数を検討しているところである。次にこの錯体に、光を照射することにより不安定なシス型の合成を試みたところ、部分的に反応していることは明らかであるが、それを単離することはできなかった。現在さらに塩化物イオンの変わりにより安定な二座配位子を含む混合錯体の合成を検討しているところである。
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