研究概要 |
1.二酸化炭素(CO_2)を水溶液中で電解還元すると,電極金属によって生成物は著しく異なる。主生成物から金属は次の4グループに分類される。(1)Pt,Ni等ではH_2が生成する(H_2金属)。(2)Hg,Pb等ではCO_2は2電子還元されぎ酸が(FA金属),(3)Au,Ag等ではCOが生成する(CO金属)。(4)Cuでは多電子還元されCH_4,C_2H_4,アルコール等,炭化水素類が生成する(HC金属)。生成物分布の顕著な変化は電極上の吸着種に関係しよう。赤外反射分光法は吸着種の種類,状態,量に関する情報を提供する。特にCuは炭化水素生成に唯一活性であり,表面種の解明は重要である。これらの結果を系統的に整理し,生成物選択性と表面吸着種との関係を分子レベルで明らかにすことを目的とした。 2.(1)H_2金属として,Ni,Feを,(2)CO金属の中から過電圧の最も低いAuを,(3)HC金属としてCu金属について反応中の電極表面種の測定とその反応性を検討した。 (1)H_2金属:Ni電極はCO_2,CO電解でH_2を生成するが,加えて小量の炭化水素類も生成する。赤外分光法により,CO_2からCOが生成し吸着すること,吸着COから炭化水素が生成することを明らかにした。Fe電極もほぼ同様であった。このグループの金属はCOを生成するが,CO吸着種がCO_2反応を阻害し,これ自身の還元速度も遅い。 (2)CO金属:赤外分光法で、Au電極のCO_2還元後に吸着CO種を観測したが,COは特定電位でのみ吸着し,CO_2還元電位では吸着しないことを明かにした。 (3)HC金属:CO_2還元時にCu電極上に吸着したCOの赤外スペクトルの観測に成功した。吸着COの還元速度は速い。反応中間種のCOの吸着もCuにのみ特異で準可逆的に電荷移行と共に進行することを認めた。 3.以上の測定により,CO_2還元はまずCOとぎ酸に分かれ,COの生成の後は,吸着COの有無とその反応性により,水素生成,炭化水素生成,CO生成に分かれることを明かにした。COとぎ酸への選択性はCO_2^-アニオンの吸着反応性にあることを提案した。CO_2^-アニオン吸着種の測定とCu上の特異的なCO吸着については今後さらに研究を要する。
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