研究概要 |
分子性結晶フラーレンC_<60>にアルカリ金属M(M=K,Rb,Cs)を充分反応させるとM_6C_<60>が得られた。C_<60>結晶自身はそれが純粋ならば、陽電子寿命は0.427ns 1世分のみであるが、M_6C_<60>では0.21-0.24,0.60-0.75,3.2-3.7nsの3成分から成ることがわかった。第1成分は陽電子と結晶の電子の波動関数の重なりの大きな領域、すなわちC_<60>分子の内部および周りで陽電子が自由消滅するもの、第2成分は表面での消滅、第3成分はオルソポジトロニウムを経て消滅するものと帰属した。層間物質モンモリロナイトの層間のNa^+をAl^<3+>,Zn^<2+>,Pb^<2+>,Cu^<2+>,Mg^<2+>で置換して無機侵入型化合物を合成し、得られた化合物にさらにオキシンを作用させて金属錯体を含むモンモリロナイト化合物を合成した。Na^+をアルキルアンモニウムで置換して層間に長鎖アルキル基っを含む有機侵入型化合物を合成した。この化合物の陽電子消滅スペクトルを測定したところ、そのドプラー拡がりから求められるhパラメターは0.55-0.58であり、寿命スペクトルの第2成分は1.12-1.74nsであるが、これらの値は相当するアルキルアンモニウム塩結晶での値とそれぞれ良い相関のあることが見い出された。すなわちオルソポジトロニウムを経由する陽電子消滅はホストのケイ酸塩層ではなく、層間場領域で起こることが明らかになった。従来手の届かなかった領域の情報を得ることができた。Al-オキシン、Mg-オキシン錯体はモンモリロナイトの層間に入れてもそのけい光は変わらないが、Zn-オキシン錯体は層間に入れると層間場のため12nm青シフトする。黒鉛カリウム層間化合物KC_8の陽電子二次元角相関はこの化合物でもポジトロニウムが形成されることを明らかにした。
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