研究概要 |
1.二環性アミノアルコールを不斉源に持つベンゾジチオフェンのホスホニウム塩と2-(ヒドロキシメチル)ベンゾジチオフェン-5-カルバルデヒド用いてジアリールエチレンを合成した。ついで,このエチレンの高圧水銀灯による光環化を行い,両端に官能基を有するヘリセンを合成した。得られたヘリセンのジアステレオマ-はカラムクロマトグラフィーで容易に分離できることが明らかとなった。分離精製したヘリセンのジアステレオマ-にリチウムエチルメルカプチドを作用させると不斉源が高収率で除去できることを見い出した。これらの一連の反応により,両端にヒドロキシメチル基を有する光学活性[7]ヘテロヘリセンの(P)-体と(M)-体を純粋に合成することに初めて成功した。 2.(ビスヒドロキシメチル)[7]チアヘテロヘリセンのラセミ体とリパーゼ(シュードモナスセパシア)とのトランスエステル化反応の研究で,(P)-体の(ビスヒドロシキメチル)[7]チアヘテロヘリセンが鏡像体過剰率98%で得られ,さらにリパーゼとしてカンジダアンタークチカを用いると,(M)-体のヘリセンが92%の光学純度で得られることを見い出した。このようにしてリパーゼによるヘリセンの光学分割に世界で初めて成功した。この手法により両端に官能基を有する光学活性ヘリセンの両方のエナンチオマーを高純度で,しかも多量にすることが可能となった。これらの光学活性ヘリセンを用いた不斉合成の研究が今後大いに期待される。
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