重ヘテロ原子を含むπ電子系化合物の合成法の確率とその物性評価を行い、次の結果を得た。 (1)銅塩を用いてπ電子系を活性化することでπ電子系に直接リン原子を導入する新規の合成法を確立した。この方法を用いると今まで合成困難であったリン原子を含むπ原子系化合物が、入手容易な臭化物から一段階で合成することが出来るようになった。 (2)この方法を用いて、約40種類の新規の有機化合物を合成した。 (2)これらの化合物の2次の非線形光学特性を測定し、かなりの大きな非線形特性を示すものを見いだした。 (3)これらのリン原子を含む化合物は、一般的に対応する窒素原子の化合物より吸収波長が大きく短波長側によったいるため、かなり短波長のレーザー光でも再吸収を起こさないため、非線形光学材料として優れていることが明らかとなった。 (4)結晶構造解析を行い、大きな非線形性が実測された化合物は反転対称中心を持たない結晶構造を取ることも確認した。 (5)類似の構造を持つ化合物に置いて、窒素原子を含む化合物とリン原子を持つ化合物を比較すると、前者は分子自身の光学非線形特性がそこそこあっても結晶に置いては非線形性が見られないものが多かったが、後者は結晶に追いても非線形性が見られるものが多かった。結晶構造を決定した化合物の数が少ないため確定的なことは言えないが、リン等の高周期元素は、窒素などの低周基元素と比べると一般的な電気陰性度が小さいため、その化合物の基底状態におけるダイポールが小さくなり、結晶構造に置いて比較的反転対称構造を取りにくいのではないかと予測される。
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