研究概要 |
銀微粒子分散酢酸セルロース膜による薬物等の検出を通して,微量物質の検出における,SERSのより広範な利用の一助となることを目指すのがこの研究の目的である.分散膜を用いる方法は膜を一度作れば,測定時にカッターナイフなどで適当な大きさに切り使用でき,試験紙を用いるような感覚で,SERSの測定を行うことができることができる.本研究により銀微粒子分散酢酸セルロース膜が,SERSの測定のセンシンング材料として用いることができることがわかり,この方法が電極法やコロイド法より簡便に行えることが示された. 本法により以下に示す薬物のSERSバンドを観測できることが示された.キナクリンは坑マラリア作用を持つ薬物であるが,10^<-7>Mの溶液からもSERSバンドを観測することができ,本研究で取り上げた薬物の内で最も低濃度までSERSを観測できた.その他つぎのような薬物の検出に成功した(括弧の中の値は検出限度濃度を示す).テオブロミン(利尿剤:10^<-6>M),ニコチン酸(ビタミン:10^<-6>M),4-アミノピリジン(麻酔薬:10^<-4>M),ニコチン(タバコの含有成分:10^<-5>M),エリプトシン(坑癌剤:10^<-5>M),ウリジン(10^<-6>M). 環境汚染物質としては洗剤を取り上げたが,本法でそのSERSの観測に成功していない.今後更に研究を継続して行く予定である. 本法によるSERSの観測での最大の問題点はBlankのバックグラウンドである.これは主に銀表面で光分解で生ずる無定型炭素によるバンドである.このバンドは,コロイド法や電極を用いるSERSでも現れるが,分散膜法では特に顕著である.この問題点についても今後の検討が必要である.
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