研究概要 |
メダカの性は遺伝的に決定され、性決定様式はXX-XY型と考えられているが、性染色体は未だ同定されていない。こうした未分化な段階にある性染色体を細胞遺伝学的に判別するために筆者らは、性と連関したDNA配列(SL5,SL110)を単離した。 本研究では、第1に、これらの塩基配列を決定し,PCR法で判別可能なDNAマーカーを開発した。これらは,近交系間での性染色体のマーカー遺伝子となるばかりでなく,系統によってはX染色体とY染色体を判別するマーカーともなりうることが明らかになった.これらのDNA配列は,今後細胞遺伝学的に性染色体を同定することに役立てたい. 第2に,連鎖解析から,性決定遺伝子、性連関の体色遺伝子とこれらDNAマーカーとの遺伝子地図を作成することを試みた。特に、XX雌ととXY雄の組替え率に注目した。DNAマーカーを用いた今回の実験結果から,雄においては性染色体の25cM以上の範囲にわたって組換えが抑制されていることが確実になった.今後,性転換個体(XY雌,XX雄,YY雄,YY雌)を用いた実験(現在進行中)によって,雄での組換え抑制の原因が精子形成過程そのものにあるのか,それともX染色体とY染色体がヘテロの場合に起こるのかの検討が可能になる.雄における性染色体の組換え抑制は,白色雌・黄色雄のY染色体連鎖遺伝子系統が維持されてきたメカニズムを説明することを可能にした.また,この現象を,メダカの性染色体の構造と遺伝子の解析に有効に利用することが可能であることが考えられる。
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