研究概要 |
環境指標としていろんな生物がとりあげられる。土壌動物もその対象となることがある。土のあるところ土壌動物はかならずみつかる。陸上の生物の世界では 緑色植物とその生活をささえている共生者,とくに根圏の共生者である土壌動物は重要な環境指標たりうる。しかし残念なことに土壌動物のおおくは基礎情報がとぼしい。科や目の単位でしか把握できないのが常である。そのなかでカマアシムシ類(PROTURA)は他のものとちがって,種・亜種・令構成までの識別が可能である。 本課題での調査研究をふくめ,すでに日本列島各地3050点以上での種構成・令構成・その地点の植生・標高・暖かさの指数などの記録の集積をおわり,これらの基礎情報をとりまとめ,あわせてすべての記録の種属別・都道府県別・島嶼別の記録の索引も完成した(添付論文3)。 カマアシムシ類はおそらく古生代デポン紀起源,系統上まことに特異な存在で近縁とみなしうる現生動物がみあたらない。体長1ミリ内外で半透明 ゆっくり土のなかの隙間をはいあるくので人目にはつきにくいが,緑あるところ世界中どこにでもみつかる。既知560種余,日本列島からは今回あらたに記載したる種(添付論文1,2)をくわえ,59種がしられている。 これらの研究をつうじて集積された基礎情報の基盤は蒐集されてきた約5万点のカマアシムシ類の標本にある。すべての種の基準標本(Holotype specimens)はもちろん,一連の研究でえた標本の大半は国立科学博物館に収められ,一部の参考標本は横浜国立大学環境科学研究センター・中国科学院上海昆虫研究所・スイス自然史博物館・カリホルニア大学エツシグ博物館などに保存され,将来の学際的・国際的な活用にもそなえた。
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