研究概要 |
有毒アオコMicrocystisが細胞内に産生する毒素ミクロシスチンの湖沼生態系での挙動を野外調査及び実験によりあきらかにすることを目的に本研究を実施した。 霞ヶ浦及び印旛沼においてアオコ細胞中の毒素ミクロシスチン量は74〜632μg・g^<-1>と変動し,湖沼水中には0〜0.33μg・L^<-1>の濃度で溶解し,動物プランクトンBosmina fatalisに6.3〜270μg・g^<-1>の濃度で蓄積していることがわかった。 混合栄養を行う黄金色藻類Poterioochromonas malhamensisは有毒アオコを捕食すし,消化して増殖する。これは,長鞭毛によるアオコ細胞の捕獲-長鞭毛の収縮運動による鞭毛基部への移動-Feeding cupによる捕獲-食胞内への取り込みと消化,という過程でおこなわれる。消化されたアオコ細胞より放出されたミクロシスチンの殆どは分解されずの細胞外に放出される。湖沼水への毒素ミクロシスチンの溶存はアオコ細胞のバクテリアによる分解だけではないことが判明した。 イ-ストエキスに含まれるL-リジンは1ppmの低濃度でもMicrocystisの細胞を溶解し,Microcystisのみに特異的に作用することが判明した。霞ヶ浦に溶存する遊離アミノ酸は平均して0.5ppmであるが,季節によってはMicrocystis細胞の溶解,ミクロシスチンの湖水への放出に関与している可能性が示唆された。 タマミジンコMoina macrocopaに対する有毒アオコの影響を調べた結果,タマミジンコに致死影響を及ぼす毒成分はミクロシスチンではないが,ミクロシスチンの合成と密接に関連している物質であることが示唆された。一方,食用ガエルRana grylioのオタマジャクシは有毒アオコ及びそれが産生する毒素ミクロシスチンの影響を全くうけないこと,さらに有毒アオコを餌として,オタマジャクシはカエルまで生長すること,また,オタマジャクシは有毒アオコを非常によく摂取し、有毒アオコの水の華を減少させること,が判明した。
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