研究概要 |
ヒャクニチソウの単離葉肉細胞から管状要素への分化過程で、形態形成に先立ち分化に特異的に発現する遺伝子TED2,TED3,TED4をマーカーとして用いて、維管束分化の仕組みについて解析することを目的とした。まず、TED3のゲノムDNAの断片をGUS遺伝子につなぎシロイヌナズナに導入し、形質転換個体を得た。得られた形質転換個体を解析した結果、TED3ゲノムの転写開始点から上流約500bpのうちに、木部細胞特異的に発現する調節領域が存在することが明らかになった。この領域にはこれまで報告されている木部特異的な促進cis因子は見られず、これまでにないcis因子が存在することが予想された。 次に、TED2タンパク質の発現・機能を知るために、まず、TED2の遺伝子産物を大腸菌中で発現させ、これを用いて抗体を作成した。この抗体を用いて、in vitroの管状要素分化過程および、個体内での維管束発達過程でのタンパク質の発現を調べたところ、mRNAとほぼ同様な発現パターンを示し、TED2タンパク質の発現は、主に転写レベルで制御されていることが明らかになった。さらに、TED2の機能を解析するために、ヒャクニチソウ形質転換根系を用いて、TED2遺伝子のアンチセンスDNAの遺伝子導入を行った。その結果、TED2のアンチセンスDNAを導入した形質転換根の中に、TED2タンパク質の発現が抑えられると同時に、維管束の異常が見られるものがあり、TED2タンパク質は維管束形成において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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