研究概要 |
光合成光化学系I(光依存性プラストシアニン:フェレドキシン酸化還元酵素、以下PSIと略す)は、10種以上のサブユニット(PsaA〜PsaM)から構成される色素タンパク質複合体である。本研究では、PsaKの遺伝子破壊株を作製し、その表現型を解析することにより、これまでに研究が行われてこなかったPsaKの機能や役割を明らかにすることを目的とした。デタベータから得られたSynechocystis sp.PCC 6803のpsaK遺伝子塩基配列に基づきプライマーを合成し、ゲノムDNAからPCR法によりpsaKを増幅し、クローニングした。カナマイシン耐性遺伝子を挿入してpsaKを破壊した組換えDNAを構築し、これをSynechocystis sp.PCC6803野性株に導入し、PsaK欠損変異株を作製した。サザンハイブリダイゼーションにより野性株の遺伝子が残存しないこと、ノーザンハイブリダイゼーションによりpsaKのmRNAが存在しないこと、さらにPSI標品にPsaKポリペプチドが存在しないことを確認した。この変異株は、光独立栄養条件下における生育は可能であったが、菌体のクロロフィルやフィコビリンが減少していた。 また、PsaA、PsaB、PsaCのように電子受容体を持たないAccessory subunit(PsaD,PsaE,PsaF,PsaI)の生理的重要性を明らかにするために、各々の欠損変異株を用いて、温度や強光がこれらの変異株の生育・生存や光合成特性・活性等に及ぼす影響を調べた。その結果、PsaD欠損変異株が光感受性であること、PsaE変異株は熱ショック処理(42℃、1時間)による熱耐性獲得能が著しく低いことなどを初めて明らかにし、これらのAccessory subunitが強光や高温等の環境ストレス条件下で重要な役割を果たしていることを示唆した。
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