研究概要 |
裸子植物のソテツ(Cycas revoluta),イチョウ(Ginkgo biloba)における精核と卵核融合に機能する精核受容装置の分化を細胞生物学的手法で、裸子植物における装置の分化を主に文献調査によって解析した.植物界の有性生殖において、藻類やシダ・コケ植物の鞭毛性雄性配偶子(精子)を使う方法から,陸上種子植物で行われる花粉・無鞭毛精細胞の生殖法への根本的な革新がどのうように進行したのかは全く解明されていない.研究の予備調査段階で,ソテツの卵核はに精核を受容するための装置が備わるらしいことがわかったので,その分化,発生を解析し,さらに植物界におけるこの装置の出現・分布を検討し,原始種子植物段階での有性生殖法の進化がどのように進行したかを考察する基礎データを得ることを目的とした.その結果,以下のことが明らかになった; 1.精核受容装置は核包膜が内方に陥入した凹所として分化を開始し,さらに第二次分化として核包膜が微細な多数の襞となってこの凹所部分を取り囲む.2.ソテツにおいては,卵細胞分化の中頃,すなわち腹溝細胞から離れて卵核が卵中央へ移動する時期から卵核横側に分化を開始し,卵核の表面を頚細胞側に移動しながら凹状から核輪郭に沿った平坦化した構造に一時変わる.卵核の頂端まで移動すると,再び陥入構造に変わり,精核を受容する最終位置に配置される.3.イチョウでは,ソテツにおけるような挙動はとらず,精子が卵細胞と融合した後,精核が卵核に接近する短時間の間に受容装置が分化集現し,精核を受容する.4.このような分化・挙動の違いは、卵細胞サイズと関係があるらしい.すなわち、長径が約350μm以上の卵細胞を分化する分類群では、卵核上に精核を収容する凹所(=受容装置)が分化するらしいことが、種々の裸子植物の受精段階を示す図から明らかになった。マツ科植物である。
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