研究概要 |
我々は、4種のグロビン鎖(a,A,b,B)と2種のリンカー鎖(L)から構成される環形動物多毛類の巨大ヘモグロビン(Hb)の全アミノ酸配列を決定して、その分子構築が"12{4(a・A-b-B)・Le}"と表せることを提案している。本研究では、グロビン鎖の塊(4(a・A-b-B))とリンカー間の結合様式を探ることを目的とした。 超分子を糖溶液に溶いて溶解度を上げ、それを水銀膜上に展開して単分子膜(或いは2次元結晶)を作成する一連の試みの中で、たまたまイソゴカイの巨大Hbを用いたところ、その電顕像はHb分子が崩れている様子を捕らえた。これは、単一のタンパク質内で糖鎖がサブユニット間の認識或いは結合に係わっていることを示唆するように思われた。そこで、種々の単糖存在下で巨大Hbの解離を観察したところ、レクチン活性に対する糖の阻害効果の類型に分類された。また、リンカーのアミノ酸配列の中に小麦胚のレクチンと極めて相同性の高い領域を発見した。一方で、構成鎖に糖鎖の存在を検索した。その結果、2次元に展開した電気泳動上で2種のリンカーとグロビン鎖aとAに糖鎖の存在を見出だした。以上の結果に基づいて、「糖鎖接着」が巨大Hb構築の重要な要因であると結論した。言い換えれば、リンカー同士が糖を介したレクチン様の結合、即ち「糖鎖接着」によって繋がっており、その一部はグロビン鎖の塊に投錨しているものと推定される。 また、我々が全一次構造を決定したイトメHbの各構成鎖の分子量をESI-MSにより測定した。5種のポリペプチド鎖についてはシークエンスから求まる分子量と全く同じ値を得たが、a鎖の分子量はアミノ酸1残基分だけ多い値を示した。ESI-MSの精度は脅威的であり、a鎖の残基数は139から140残基と訂正された。 本研究はイギリス等諸外国の研究者、科学技術庁関連の研究機関、民間企業との共同研究として行われた。
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