研究概要 |
暗色あるいは明色の背地に長時間適応させたメダカでは黒色素胞の神経刺激に対する反応性が変化する.これが色素胞神経の被刺激性および神経分布の密度の変化によるを明かにした(Sugimoto et al.,1994).ナマズ目の魚種の2種を用い,メラノソームの凝集を仲介するムスカリン型コリン受容体の薬理学的特性を検討し,これが哺乳類のM_3型受容体の似た特性をもつことを示し得た(Hayashi and Fujii,1994).ナンヨウハギの皮膚の空色発現の機構を検討し,これがわれわれが先に解明したルリスズメダイなどの運動性虹色素胞と極めて類似の虹色素胞の存在によることを解明した.しかし,スズメダイ類と異なり,虹色素胞は一層ではなく2層であった.このことが彩度の低い空色の発現に関わると推論した(Goda et al.,1994)ネズッポ科の2魚種で従来知られていなかった青色の色素顆粒を含む色素胞を発見し,青色素胞(cyanophore),青色顆粒をcyanosomeと命名し,さらにこの細胞の微細構造と生理学的性状を明らかにした(Goda and Fujii,1995).哺乳類の血管平滑筋の極めて強力な収縮物質として注目されているエンドセリンが黒色素胞内のメラノソームを効果的に凝集させることを見い出し,さらに黒色素胞のもつエンドセリン受容体が哺乳類のET_B型に類似する薬理学的性質をもつことを示し得た(Hayashi and Fujii,in press).従来から知られている,交感神経,黒色素胞刺激ホルモン,メラニン凝集ホルモン,メラトニンなどに加え,エンドセリンなど多くの物質が色素胞の運動性反応の精妙な制御に関わると見られるが,これらについて最近の知見を総説した(Fujii and Oshima,1994).
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