研究概要 |
光合成細菌の系統進化を明かにするために、Proteobacteria αグループに属する紅色非硫黄光合成細菌に着目し、自然界より光合成細菌を分離し、光合成細菌以外の細菌も含め、16SrDNA塩基配列を用いて系統関係を調べた。その結果、光合成相金はPtoteobacteriaに広く分布し系統学的にも、形態学的にも多様であり、非光合成細菌と混在していることがわかった。 Proteobacteria α-1サブグループには、ビブリオ状から螺旋状をした光合成細菌と非光合成細菌(Phodospirillum,Phodocista,Aquaspirillum,Oceanospirillum,Azospirillum,and Magnetospirillum)が混在していた。本サブグループには7つのクラスターが存在し、分類学的には属レベルのクラスターであると考えられた。また、磁粒子形成や光合成能は分子系統学的には大きな相違ではないことが示唆された。 タイより分離した光合成細菌の中で、Rhodopseudomonas sulfoviridisに近縁な株が分離された本分離株はバクテリオクロロフィルbを有しており、バクテリオクロロフィルbを有する光合成細菌で単系統を形成した。バクテリオクロロフィルの相違は、光エネルギー獲得系の相違であり、これらは光エネルギー獲得系の相違が起こった後で分岐した光合成細菌であると考えられた。 Proteobacteria α-3サブグループには2属が報告されている。淡水・陸地に生息するRhodobacter属と、海水環境・塩分を含む環境に生息するRhodovulum属である。Rhodovulum属細菌のほとんどはその生息環境の相違からRhodobacter属から移された種である。本研究では、自然界特に海水や活性汚泥より食塩含有培地を用いRhodobacter-Rhodovulum属細菌を分離し、その帰属を調べたところ、食塩を要求する光合成細菌でありながら、分子系統学的には食塩を要求しない淡水性光合成細菌Rhodoobacter属に近縁であった。よってこのことより、Proteobactera α-3サブグループにおいては、食塩要求性は属の分類指標には成らないことを明らかにした。 本研究の結果、Proteobacteria αグループ属光合成細菌の新しい分類体系を示すことができた。自然界より光合成細菌の新種が幾つか分離された。また非光合成細菌との近縁な系統関係を、螺旋状細菌において明らかにした。自然界に生息する未知光合成細菌をさらに分離し、非光合成細菌を含めてProteobacteriaの系統進化を更に明らかし、系統進化を反映したこの新分類体系の命名がなされると考える。
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