研究概要 |
ホタルブクロ(キキョウ科)の花冠のサイズにかかる送粉昆虫の選択圧の内容を調査するため一連の実験を行った。最初に行った実験は本州と伊豆諸島から採集した個体を用いて、花冠のサイズの異なる実験集団を作りだし,送粉昆虫がそのような訪花パターンを示すかを調査した。その結果送粉昆虫(マルハナバチ・ハキリバチ・コハナバチ)のグループにより訪花パターンが異なることなることを見出した。 次に行った実験は花冠のサイズの異なる雄性期の花と花冠の大きい雌性期の花をマルハナバチに提示し,マルハナバチによる送粉により花冠サイズの違いが花粉の輸送効率にどのような違いをもたらすかを解析した。その結果花冠のサイズの大きい花は花冠サイズの小さい花より送粉効率が高いことを見出した。 次に,マルハナバチの標本を用いたシミュレーション実験により,マルハナバチのホタルブクロへの訪花に際して花冠サイズの違いが花粉の付着量・付着位置などにどのような影響を与えるかを調べた。その結果マルハナバチの体への花粉の付着位置がその後の送粉効率に大きな影響を与えることを見出した。 以上からホタルブクロの花冠のサイズの異なる集団において,大きな花冠のホタルブクロの方がマルハナバチの体の適切な位置に花粉が付着し,種子生産が高くなるという可能性が強く支持される。すなわち現在のホタルブクロの花冠のサイズはマルハナバチへの形態的適合により安定化されているという仮説を支持する。
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