これまでに公表してきたチビゴミムシ亜科甲虫類に関する論議、とくに分布、分化、系統などの論議の基礎となる個別の種の記載を、できだけ多く進めておくために、とくに重要な地域あるいは系統解析に当たって問題のある種類を選んで、優先的に分類学的な記載を行なった。 1.とくに研究の遅れていた東北日本に分布する種類について、まず非火山に分布する種群のうちのマヒルナガチビゴミムシ群を総括し、4新種を記載するとともに、オニコウベナガチビゴミムシをこの系列に含めた。4新種のうちには、世界遺産である白神山地に固有の2種が含まれている。また、鳥海山に固有の1新種を記載し、その系統関係を明らかにした。 2.朝日山群を縦走して現地調査を行ない、系統の異なる2種のナガチビゴミムシがここに生息しているのを認識した。その一方は、主として非火山性の山地に分布するもの、他方は主として火山性の山地に分布するものである。年内には論文として公表できる予定である。 3.北海道南西端に局在するオシマメクラチビゴミムシ属を、新しい資料に基づいて再検討し、その系統上の位置を確定した。その結果、渡島半島には、本州起源と沿海州起源の種類の共存することが明らかになった。 4.北海道に隣接する地域のチビゴミムシ類を検討して、道産種の由来を推定した。 5.四国の南東部からナガチビゴミムシ属の2新種を記載し、この属の盲目種が南東岸に沿って室戸岬まで細長く分布していることを明らかにした.この報告で、四国のチビゴミムシ相はほぼ解明された。
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