研究概要 |
港川人の形質が琉球列島においてどのように保持され変化したか、また琉球列島内において形質の地域変異があるかどうかを明らかにするために、沖縄県内に保管されている古人骨資料および各地の風葬墓人骨の調査を行った。 その結果、風葬墓人骨の形質には大きな地域差は認められなかったが、沖縄先史時代と中・近世の間に明瞭な形質の時代差が存在することが明らかになった。すなわち、沖縄先史時代人は、縄文人の特徴を極端にしてサイズを小さくしたような独特の風貌を有しており、種子島の広田弥生人によく似ている。ところが、中世から近世に属すると考えられている人骨は、頭型が中頭から長頭で、全体にサイズが大きく、頑丈になる傾向が認められた。 さらに、沖縄先史時代人である大当原の頭蓋計測値9項目(1,8,17,45,48,51,52,54,55)を、多変量解析法によって他の日本人集団および周辺地域集団と比較した結果は、大当原貝塚人が種子島弥生人や港川人とともに、縄文人とは少し離れて一つの集団を形成しており、南西諸島の先史時代人を特徴づける共通の形質の存在を示唆した。一方、沖縄の中・近世人は、縄文人や沖縄先史時代人とは大きく離れて本土の近・現代人に近いところに位置していた。沖縄の中・近世人には南西諸島先史時代人にみられた独特の形質がみられなくなっている。 このような先史時代と中世以降の人々の形質の変化がどのようにして生じたのかは、今のところ不明である。今後は、これらの問題を明らかにするために、さらに資料の充実を図っていきたい。
|