研究概要 |
日本から報告されているカラタチゴケ属25種について地衣体や生殖組織の内部構造と種内化学変異の両面を中心に分類学的に検討した。 1.地衣体の内部構造 カラタチゴケ属の地衣体の皮層下部に発達する組織(chondroid tissue)には菌束糸に分裂するもの(例 Ramalina conduplicans)としないもの(例 R.sinensis)の二型があり,他の分類形質と密接に関連している事が明らかになった。地衣体の充実する Myelochroa 亜属内の種は基本的には分裂型の組織を持つが,時にその特徴が不明瞭になる事もある。しかし,地衣体に窄孔が生じる Fistularia 亜属の全ての種類では後者の型が見いだされ,両者の系統関係と密接な関連を示した。この特徴は裸子器内の果托の組織にも連続的に発達する。 2.地衣成分の種内変異 日本産カラタチゴケ属に含まれる地衣成分は,デプサイド(ボニン酸他5種),デプシドン(ノルスチクチン酸他3種)であり,トリテルペン類や色素類は検出されなかった。種類ごとに地衣成分の特徴を見ると種内化学変異が見られないものは Ramalina boninensis,R.peruviana,R.sinesis,R.yasudaeだけであり,その他の種類には複数の化学的変異株と考えられる種内変異が見いだされた。特にR.conduplicansではデプサイドとデプシドンの組み合わせにより,5つの変異株の存在が認識された。また,デプサイドとデプシドンが共存する場合,デプサイドが常に常成分として存在し,デプシドンは非常成分となっている。 3.結論 日本産カラタチゴケは次のようにまとめられる。括弧内は異名である。 R.boninensis Asah.,R.conduplicans Vainio,R.commixta Asah.,R.exilis Asah.,R.hokkaidensis Kashiw.,R.intermedia Nyl.,R.litoralis Asah.,R.nervulsa Vainio,R.pacifica Asah.,R.peruviana(Ach.) Nyl.,R.siliquosa(Sw.) Nyl.,R.shinanoana Kashiw.,R.sinensis Jatta,R.subbreviuscula Asah.R.yasudae Vainio
|