研究概要 |
本研究の対象としたPb系酸化物超伝導体は、Pb_2Sr_2An_<n-1>Cu_<n+1>O_<2n+4+δ>(Aは希土類元素とアルカリ土類金属)で表され、n=1,2,3の変化によりPb系3201相、3212相、3223相と呼ばれる構造となる。本研究は、それらを合成し、それぞれ固有の物性を調べることを目的とした。 1.Pb系3201相の合成は、より均質な資料を得るために、液相法の錯体重合法を用いた。まず、沈殿物がない状態でゲル化されることに注意しながら、単相試料の合成法を確率した。また、超伝導を担うキャリアは、過剰酸素が供給していることを実験的に明らかにした。 2.Pb系3212相においては、キャリアと濃度を制御した単結晶を育成し、異方性や磁場中での物性を調べた。単結晶育成はフラックス法で行い、仕込み組成を変化させるこきとでキャリア濃度の異なった単結晶を得ることに成功した。それらの単結晶の異方性γは、キャリアの増加に伴って低下することが分かった。磁化測定により不可逆磁場Hirrとピーク磁場Hpを調べた結果、Tc近傍ではHirrとHpはγ^<-2>に比例することを明らかにした。また、異方性の大きな単結晶の低温におけるHirrは、二次元のmelting磁場として理解できることを示した。 3.Pb系3223相は、バルクの単相試料合成の成功例はないため、種々の手段を駆使して合成を試みた。構造から推察すると、より低温に安定温度領域が存在すると思われることから、反応温度の高い固相反応法ではなく、低温合成が可能な錯体重合法で試みた。ブロック層とCuO_2面のミスマッチの緩和、長時間焼成、低温合成、不純物相の制御などを考慮しながら多くの実験を行ったが、Pb3223相は確認されず、700℃より高温においてはPb3212相が支配的であり、低温側ではCa_2PbO_4が形成されてしまうことが分かった。
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