研究概要 |
本研究の目的は,金属塩化物(CuCl,GaCl_3と硫化水素の交互供給により申請者が初めて報告したCuGaS_2の原子層エピタキシャル成長(ALE)の研究成果を基礎として,1.CuAlS_2のALEが可能かどうかを調べることである.そしてCuAlS_2のALEが可能となったならば,2.CuGaS_2のALE条件を踏まえて,CuAl_XGa_<1-x>S_2混晶のALEを,(CuAlS_2)_n)(CuGaS_2)_mの規則混晶とAlとGaが混在する不規則混晶のそれぞれのかたちで試みることである.目的1.については,CuGaS_2の場合と同様に金属塩化物(III族原料にはGaCl_3の代わりにAlCl_3を用いた)と硫化水素の交互供給を行ったところ,CuAlS_2の1サイクル当たりの成長速度が単分子層厚で飽和する領域を,基板温度およびCuとSの各原料供給量に対して観測した.しかし,Al原料供給量に対して成長速度の飽和が観測されなかったこと,c軸方向だけでなくa軸方向への配向も混在していたことから,ALEは達成されていないと思われる.CuAlS_2のALE、さらに目的2.のCuAl_xGa_<1-x>S_2のALEが可能かどうかを明らかにするためには,成長メカニズムの解明が必要と考え,CuとAlの金属原料を独立に供給可能なように成長装置を改造し,原料の供給順序や供給方法をかえて成長実験を行った.実験結果から,S原料ガスがCuおよびAlの2種類の金属原料ガスと同時に混合された場合でしかCuAlS_2層が成長しないことがほぼ確かとなった.III-V族のクロライド系ALEにおいては一塩化金属分子が成長表面上に一分子層吸着することが自己停止機能につながっていると解釈されていることを踏まえ,III族原料としてAlClに分解されることが期待できる有機金属原料(C_2H_5)_2AlClを用いて成長を行った,CuAlS_2は生成することが明らかになり,この原料でCuAlS_2のALEを試みる必要がある.
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