研究概要 |
100%CH_4プラズマでの硬質炭素膜の形成過程においては,プラズマ中のCH_3ラジカルが基板上に物理吸着した時,同時にイオンシースで加速されたイオン種が基板表面に到達し,それらの表面での反応によって膜が形成されることが解った.これを確認するために,成膜速度とプラズマ中のイオン種およびCH_3ラジカルの濃度の積との関係を調べたところ,両者は定性的に良い一致を示すことが解った.次に,基板温度を変化させてSiおよびFe/Si基板上に堆積させた硬質炭素膜の特性とSi基板との界面の状態を調べた.硬質炭素膜の成膜速度は基板温度に大きく依存し,室温から200℃の範囲では基板温度の上昇と共に急激に減少し,それ以上の基板温度の上昇に対してはゆるやかに減少する.この傾向はガス圧力を変化させてもほとんど変わらない.炭素膜の密度に関してはガス圧力依存性が見られ,60mTorr以上では基板温度に対してほとんど変化しないが、それ以下のガス圧力では基板温度の上昇に対して徐々に増加し,400℃では2.8g/cm^3の値が得られた.次に,400℃にてFe/Si基板上に形成された膜の深さ方向の構造を調べたところ,ごく表面にはFexCy膜が存在しており,プラズマ中のCH_3ラジカルおよび炭化水素イオンによって基板表面に運ばれた炭素原子がイオンのエネルギーによってFe薄膜を通過してSi基板上で融合して膜が形成されることが解った.基板上の薄膜の大部分は硬質炭素膜であるが,通常の硬質膜と比べて10倍程度の耐エッチング特性(CF_4プラズマにて)を示した.また,炭素膜とSi基板との界面には極めて耐エッチング特性の高いダイヤモンド薄膜(連続膜)が堆積していることが解った.
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