研究概要 |
超伝導ウイスカーの作製とその構造および形態 溶融急冷法で固化したBi,Sr,Ca,Cu,Oからなる非晶質体を3日間、酸素気流中で約880°Cに加熱して、3〜5mmの長さのウイスカーを成長させた。これらのウイスカーはBi,Sr,Cuのモル比が2:2:1:2のいわゆる低温相であり、幅が約10ミクロン(C面)、厚さ2〜3ミクロンでA軸方向に長く成長したものであることが、X線回折と電子顕微鏡観察から明らかになった。メルト・クエンチ法で作る非晶質母材の組成比を種々変化させても、モル比が2:2:2:3の高温相は成長せず、ウイスカーはすべて低温相であった。一般にウイスカーは根元部分が太く、先端部へ向けて細くなる形態を示したが、走査電子顕微鏡観察からは、C面でステップがしばしば観察された。またウイスカー表面に2〜3ミクロンの島構造が認められる場合があり、形態観察を通しては、理想的な1次元形態とは言い難いものであった。 超伝導ウイスカーの抵抗・温度特性 ウイスカーの抵抗・温度特性を直流4端子法を用いて測定した。それによると、幾つかのウイスカーにおいては107Kあたりで大きく抵抗が減少し(高温相の特性)、70Kあたりでゼロになる2段階の抵抗減少を示した。これは1本のウイスカーが高温相と低温相とから形成されていることを現わしている。高温相と低温相の違いは、C/2軸間に挟まれるCu-O2面の数(前者が3枚、後者が2枚)であり、A軸およびB軸寸法に差がないことから、両相は比較的容易に混在しうる結晶学的関係にあるといえる。形態観察でステップや島構造がC面上で認められた事実は、両相の混在を反映しているものと考えることができ、抵抗-温度特性の結果を傍証するものである。 高精度自動温度調節機能を備えた極低温装置の作製 液体窒素クライオスタット(Oxford社製、D1710)を試料冷却系に用い、高精度温度コントローラー(Oxford社製、ITC503)を付加して極低温装置の作製を行った。ナノボルト・プリアンプ付き超高感度電圧計とプログラマブル定電流発生器を用いて、低ノイズ超高精度電流電圧測定系を作製した。温度制御に関しては、80K近傍で0.03Kの精度で制御可能であった。
|