研究概要 |
各種の耐熱金属(W,Re,Mo,Ta,Nbなど)を高真空中(Pr=0.2〜20μTorr)で色々な温度(900〜2300K)に加熱して、その表面にアルカリハライド(MX,例えばNaBr,LiI,Kcl,RbBrなど)の分子線を入射させ、熱陽イオン(M^+)の生成効率(β^+)を測定後、そのデータを我々の創案した理論式で解析した。その結果、(1)金属の表面電子物性を支配する仕事関数,特に,熱陽イオンの生成に有効な仕事関数(φ^+)の値は、中間の温度領域(Tm,例えばNaBr/W系でPr=0.2μTorr,入射密度Nが4×10^<13>分子/cm^2secのときには、約1100〜1400K)で最大値を示し、(2)その領域の上限はNに由らないが、しかしPrの増大と共に高温側にシフトする。一方、(3)その下限値は、Prに依らないが、Nの増大と共に高くなる。また、(4)実質的清浄な表面が維持される最低の温度(T^*)は、Prの増加と共に高温側に移動する。一方、(5)表面に吸着した残留ガス成分を、昇温脱離式質量分析法で測定したところ、O^+やCO^+として検出される酸素系化合物の吸着量と、φ^+の変化量との間には、良好な相関々係が確認された。また、(6)熱電子の放射に有効な仕事関数(φ^e)も同様な実験条件の下で測定して、φ^e対Tのパターンが、φ^+対Tと全く同一の様相を示し、最低温度T^*も両者間で一致することを見出した。さらに、(7)表面電子物性のコントラスト(△φ^≠≡φ^+-φ^e)と、その温度依存性なども解明し、例えばWではT=1500〜2200Kの間で△φ^≠=0.7P±0.05eVの一定値となることをつきとめた。さらに、(8)上述のT^*とPrとの定量的な相関関係も追究し、例えばReの場合には、T^*=(2820±36)+(241±15)lagPrの実験式を樹立した。 以上の新しい実験データや,理論的な解析結果などは、スエ-デンのウプサラ市で開催された第4回欧州真空会議や、福岡市に於ける日本化学会の九州支部・中国四国支部の合同大会などで,順次講演発表すると共に、それらのエッセンスは、イギリスの国際学術月刊誌Vacuumに掲載が確定しており、現在印刷中である。
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