研究概要 |
連立一次方程式に対する数値解法の誤差解析に関連するつぎのような研究を行った. 1.1-ノルムに関する条件数の推定法の比較研究 1-ノルムに関する条件数の推定法として有名な3つの方法(LINPACKなどにおいて用いられてきた方法,わが国で開発された塚本-名取の方法,LAPACKで用いられているHagerの方法)を計算時間,精度の面から比較した.計算時間の面からは,塚本-名取の方法がもっともよく,精度の面からはHagerの方法がもっともよかった.また,どの方法の計算時間も方程式を解く時間に比べると無視できる時間内に推定値が得らた.したがって,Hagerの方法を1-ノルムに関する条件数の推定法として用いるべきであるという結論が得られた.ただし,塚本-名取の方法はプログラミングが簡単であり簡便な方法としての存在意義はある. 2.共役勾配法の誤差の複雑な振る舞いの解明 近年Greenbaumによって確立された共役勾配法の後退誤差解析の手法を用いて,共役勾配法の誤差の複雑な振舞いと係数行列の固有値の分布との関係について調べることを目標として,研究を行った.その結果,後退退誤差解析の手法によって共役勾配法の誤差の複雑な振る舞いをある程度再現できることが分かった.しかし,この手法においては元の行列の次数をNとするとき10N程度の次数の行列の計算を正確に行う必要があり,計算時間や記憶容量の点で多くの実験が行えなかった。そののため,係数行列の固有値の分布との関係については従来から知られている結果「固有値が密集していれば収束が速い」以上のものは残念ながら得られなかった.
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